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平成19年卒 樋田 知之 (中津市民病院)

2011年07月30日

放射線科に入局して

 初期臨床研修を終えた私が放射線科へ入門して丸2年の月日が経ちました。医師としてはもう5年目です。多少は医師の風格とやらが身についたでしょうか、多少なりとも放射線科医としての心構えが板についてきているでしょうか。この2年間は本当にあっという間だったと思います。放射線科医として働きはじめ、教科書片手に慣れない仕事に悪戦苦闘する毎日。画像を通してたくさんの症例に触れ、また先輩方の深い読影に驚き感嘆する日々の中、かけがえのない経験を積み重ねることができたのではないかと思っています。

 思えば学生や研修医の時分には、放射線科といえば薄暗い読影室で画像と対座しているぐらいのイメージしかなく、CTやMRIを見る以外にも、いろんな検査を手がけているんだよと、何かの折に説明されて、ああ、そうなんだ、と思った程度の認識しかありませんでした。実際に働きはじめてからも、仕事内容にしろ、わかったかのように錯覚していた画像の読影にしろ、見えていたのはほんの一部でしかなかったんだなと実感しています。今、目の前にある画像がいかにして創られ、どのような意味を持ち、そしてどう解釈すべきか――こうした、画像に関する知識に加えて、この疾患はこんな画像になるはずで、治療はこうで手術はこうだから画像では、、、などなど、各々の疾患に関しても幅広い知識を求められる、、、他科の先生方とのカンファレンスや、その他数多く開催されている勉強会において、経験と知識に基づいた鋭い読影を先達が繰り広げているところを目の当たりにする度に、その背中にいつかは辿り着くべき未来図を垣間見て、よし頑張ろう! と思ったりしています。

 画像というものは客観的なものながら、その意味合い、解釈は個人で異なります。外科の先生が画から手術をイメージするように、内科の先生が症状と画を照らし合わせるように、1枚の画に映るものは同じでも、映すもの、求めるものは様々です。そんな中、放射線科医というものは1枚の画から、各科の先生方が求める情報を含めて、画に映るすべての情報を引き出しうる唯一の医師ではなかろうか、、、その画が本当に異常ではないと断言しうるのは、放射線科医をおいて他にいない、、、いささか傲慢かもしれませんが、ふと、そんなことを思ったりする時もあります。

 今日も今日とて画を見つめ、映る現人に思いを馳せる。診療での責任をほんのりと感じつつも、放射線科医になって良かったと実感が湧いてきています。

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